最近特にこれに関連する問題が目立つので、急遽今回はこのトピックにしました
「Progressive Disciplineという言葉を見て「?」の人は 要注意!」
 

今回は「年末の人事考課をあわててしないために今から準備しておくこと」について、の予定だったのですが、最近目立って問題の多い(ほんとうに多いのです)、「Progressive Disciplineについて」に急遽変更しました。
「何?それ?」の人はもちろん、「ああ、どうやって従業員を罰するかということね」と思った人も、見直す必要あり。
特に駐在員が定期的に入れ替わる日系企業で、一貫性のある公平な処置ができる体制にするために、できるだけ早く整備しておきましょう。問題が起こった時にその場しのぎで対応したがために、訴訟問題にまで発展してしまったケースが頻繁に起こっています。

Progressive Disciplineとは:

日本語に訳すと、「段階的懲戒処分」。でもこの日本語から想像することと、実際アメリカで行われているProgressive Disciplineの中身はかなり違っています。
1) 日本とアメリカの違い
・成文化しているか否か
アメリカでは、どんな行為が懲戒処分の対象になるのか、マネジメントはどのように対応すべきか、次の処置はどうなるのか、など、誰が対応しても会社として一貫した対応ができるように、かなり細かく成文化されています。日本では、本人がどうしてだかわからない内に、冷淡な態度で接しられたり、遠まわしに嫌味を言われるなど、精神的なプレッシャーをかけるような間接的な行為が多く、しかも上司によって、あるいは部下によって対応が大きく変わることが多いようです。このような慣習を持ったままアメリカで部下に接すると「差別」ということで大変なことになります。

・disciplineの概念
日本では「懲戒」=「罰する」という意味で使われていますが、アメリカでは「是正していく」という意味で使われます。つまり、まず悪い行為であることをきちんと本人に理解させることが必要です。日本のように本人に気付かせようと遠まわしに何かをするといったことはこの際さっぱり忘れて下さい。はっきりと「ここが悪い」と理解させます。その上で、(まだ罰しません)どうすることが正しいことか教え、そのための改善策を指示したり一緒に考えたりします。もちろん、どんな悪いことをしてもこんな具合にとろとろとやるわけではありません。前述のように、何をした場合こう処置する、とかなり細かく決めているので、例えば会社のお金を使い込んだら即停職、ということもあり得ます。
・法的背景、社会的背景
日本人が、「そんなことは常識でわかるだろう!」と叫びたくなることもアメリカでは「言わなきゃわからないこと」になっていることがあります。また日本人は全く「差別」なんてこと考えてもいないのに、接し方によっては「差別」と取られてしまうことがあります。アメリカの人事で最も注意しなければならないことは、この「差別」です。女性、マイノリティ、40歳以上、身障者、退役軍人などは法的に「保護されるグループ」になります。
2)Progressive Disciplineとは
会社の要求する基準を満たしていない勤務態度について、どこを改善すべきか理解させ、一緒に改善していくプロセスのことです。繰り返すようですが、Progressive Disciplineの目的は「従業員の勤務態度を改善させること」であり、「罰すること」ではありません。
通常、verbal warnings(口頭での注意)→written warnings(書面での注意)→formal probationary notice(正式な警告書)→suspensions without pay(給与の差し止め)→demotion(降格や停職)、といったプロセスになっています。

日系企業の実態:

とにかく気が付いても放っておくケースが日系企業には圧倒的に多く、さらに悪いのは、勤務態度が悪くても給与は定期的に昇給し、ボーナスもちゃんと支払っている、という恐るべき実態。態度が悪いのをきちんと注意せず放っておいても、自然に勤務態度が改善する、ということはまずありません。さらに態度が悪化します。そういう態度の悪い従業員を放っておくマネジメントに他の従業員も失望し、やる気をなくすか、転職してしまうか、あるいは同じように悪い態度をとるようになってしまいます。ここで態度の悪い従業員が例えば白人男性で40歳未満だったりした場合、他の従業員が「差別」でクレームしてくることもあります。日本人としては面倒なので放っておいただけなのに、他の従業員から見ると、「差別」となるわけです。
また、「もう堪忍袋の緒が切れた!」と、今まで正式に警告を出してこなかったのに、態度の悪い従業員を突然解雇しようとするケースがあります。かなり訴訟のリスクが高いことを覚悟の上での解雇になります。この従業員が毎年昇給していたり、5段階評価の人事考課で「3」をもらい続けていれば、勤務態度の悪さで解雇すればもう赤信号です。訴訟される可能性はかなり高く、その訴訟で会社が勝つ確率は限りなく低くなります。
そうして怖くて解雇もできず気が付けば、やる気のない従業員だけが残っている、なんていう実態になってしまいます。

今すぐやるべきこと:

現在の状況が前述のように悲惨でなくても、以下の事項は今すぐ実行して下さい。これはマネジメントの大切な役割です。

□ Handbookの「Progressive Discipline」のページをチェック。
   ↓
  ない場合は、ハンドブックに入れましょう。

□ HandbookのAcknowledgement Sheetを回収しているか。
   ↓
  ない場合は、Acknowledbement of Receiptを作って、従業員全員にサインしてもらいましょう。人事担当者はこれをきちんと保管しておいて下さい。

□ Progressive Discplineの整備。
   ↓
   整備されていない場合は、違反行為の基準、違反行為に対する対応手順、記録の取り方などをきちんと決めて文書化しましょう。

□ マネジメントへのトレーニング。
   ↓
  会社の規則違反をした場合、どのように対応すべきかをマネジメントに周知させましょう。

□ 過去の処置の整理
   ↓
  過去会社がどんな処置を取ったか記録をきちんと整備しておきましょう。

(参考資料: Human Resources Progressive Disscipline, 2004 About, Inc.
Implementing Progressive Discipline Policies to Minimize Liability and Improve Employee Performance,
1998, Fairlield and Woods, P.C.)

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